量子計算機の基本ゲート 一覧

次に、1ビットのユニタリー変換と2ビットの制御NOTで、
任意の2ビットのユニタリー変換が作れることを示す。

前節で、1ビットのユニタリー変換と2ビットの制御NOTで、
制御U、制御Vが作れることを示したので、
制御U、制御Vを任意の2ビットのユニタリー変換の構成に用いることができる。

以下、2ビットの状態を、
$|0\rangle |0\rangle =|0),|0\rangle |1\rangle =|1),|1\rangle |0\rangle = |2),|1\rangle |1\rangle = |3)$
と書くことがある。

任意の2ビットのユニタリー変換は、
その固有値と固有ベクトルで対角化した表示で、
\begin{align}
S=\sum_{n=0}^3 e^{i\gamma _n} |\psi_n \rangle \langle \psi_n | \label{eq:Unitary}
\end{align}
と書ける。$|\psi_n \rangle ,e^{i\gamma_n} (n=0,1,2,3)$は
それぞれ$S$の固有ベクトル、固有値であり、
$S$を与えればそこから求めることができる。

この任意の$S$から決まる固有ベクトル$|\psi_n \rangle $を
2ビットの標準基底で展開すると、
\begin{gather}
|\psi_n \rangle =\sum_{a,b=0,1} c_{ab}^n |a \rangle |b \rangle
\end{gather}
となる。まずこの$|\psi_n \rangle $に対して、
\begin{gather}
G(\psi_n )|\psi_n \rangle = |n ) \qquad (n=0,1,2,3)
\end{gather}
と2ビットの状態に変換する$G(\psi_n)$が作れることを示す。

例として$n=3$のときのみを示すことにする。
すなわち$|\psi_3 \rangle$を$|3)=|1\rangle |1\rangle$に移すことを考える。

$|\psi_n \rangle$を2ビットの状態を基底として行列表示すれば、
\begin{gather}
| \psi_3 \rangle = \begin{pmatrix} c_{00} \\ c_{01} \\ c_{10} \\ c_{11} \end{pmatrix}
\end{gather}
ここで、$c$の$n=3$の添え字は見にくくなるので省略した。

これに、前に述べた第1ビットを制御ビット、
第2ビットを標的ビットとした制御U演算
\begin{gather}
\begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & u_{11} & u_{12} \\
0 & 0 & u_{21} & u_{22} \\
\end{pmatrix}
\end{gather}
を作用させると、
\begin{align}
& \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & u_{11} & u_{12} \\
0 & 0 & u_{21} & u_{22} \\
\end{pmatrix} \begin{pmatrix} c_{00} \\ c_{01} \\ c_{10} \\ c_{11} \end{pmatrix} \\
= & c_{00} \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}
+ c_{01} \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}
+ \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ c_{10}u_{11}+c_{11}u_{12} \\ c_{10}u_{21}+c_{11}u_{22} \end{pmatrix}
\end{align}
ここで、
\begin{align}
c_{01}u_{11}+c_{11}u_{12} = 0
\end{align}
となるように$u_{11},u_{12}$をとれば、
\begin{align}
|\psi_3 \rangle \stackrel{\text{制御U}}{\longrightarrow } c_{00}|0\rangle |0\rangle + c_{01}
|0\rangle |1\rangle + c_{11}'|1\rangle |1\rangle
\end{align}
のように、$|1\rangle |0\rangle$を掃きだすことができる。

続いて、第1ビットにNOT演算を行うと、
\begin{align}
|\psi_3 \rangle \stackrel{\text{制御U+NOT}}{\longrightarrow } c_{00}|1\rangle |0\rangle + c_{01}|1\rangle |1\rangle + c_{11}'|0\rangle |1\rangle
\end{align}
この状態に、上と同様の制御Uを行うと、
$|1\rangle |0\rangle $状態を掃きだせるから、
\begin{align}
|\psi_3 \rangle \stackrel{\text{制御U+NOT+制御U}}{\longrightarrow } c_{01}'|1\rangle |1\rangle + c_{11}'|0\rangle |1\rangle
\end{align}
最後に、第2ビットを制御ビット、第1ビットを標的ビットとした制御V
\begin{align}
\begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & v_{11} & 0 & v_{12} \\
0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & v_{21} & 0 & v_{22} \\
\end{pmatrix}
\end{align}
を作用させると
\begin{align}
&\begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & v_{11} & 0 & v_{12} \\
0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & v_{21} & 0 & v_{22} \\
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix} 0 \\ c_{01}' \\ 0 \\ c_{11}' \end{pmatrix}\\
=& \begin{pmatrix}
0 \\ c_{01}'v_{11}+c_{11}'v_{12} \\ 0 \\ c_{01}'v_{21}+c_{11}'v_{22}
\end{pmatrix}
\end{align}
前と同様に、
\begin{align}
c_{01}'v_{11}+c_{11}'v_{12}=0
\end{align}
となるように$v_{11},v_{12}$をとれば、
$|0\rangle |1\rangle$を掃きだすことができて、
結局、
\begin{align}
|\psi_3 \rangle \stackrel{\text{制御U+NOT+制御U+制御V}}{\longrightarrow } c_{01}''|1\rangle |1\rangle
\end{align}
よって、$c_{11}''=1$となるように$u_{21},u_{22},v_{21},v_{22}$をとれば、
\begin{align}
|\psi_3 \rangle \longrightarrow |1\rangle |1\rangle
\end{align}
したがって、$|\psi_3 \rangle $から$|1\rangle |1\rangle = |3)$へ
変換する$G(\psi_3)$が構成できた。

$|0\rangle |1\rangle , |1\rangle |0\rangle , |0\rangle |0\rangle$への変換についても同様に構成できる。
例として、上で示した$|\psi_3 \rangle $から$|1\rangle |1\rangle = |3)$への変換の量子回路を下に示す。

したがって、$G(\psi_n)$が1ビットのユニタリー変換と、
2ビットの制御NOTで作れることが示せた。

続いて、この$G(\psi_n)$を用いて
任意の2ビットのユニタリー変換が作れることを示す。

任意の2ビットのユニタリー変換は(\ref{eq:Unitary})のように書ける。
これが$G(\psi_n)$を用いて、
\begin{align}
S=\prod_{n=0}^3 G(\psi_n)^{-1} X_n G(\psi _n) \label{eq:Unitary2}
\end{align}
と書けることを示す。ここで、$X_n$は、
\begin{align}
X_0 = e^{i\gamma _0} |0)(0|+|1)(1|+|2)(2|+|3)(3| \\
X_1 = |0)(0|+ e^{i\gamma _1}|1)(1|+|2)(2|+|3)(3| \\
X_2 = |0)(0|+|1)(1|+ e^{i\gamma _2}|2)(2|+|3)(3| \\
X_3 = |0)(0|+|1)(1|+|2)(2|+ e^{i\gamma _3}|3)(3|
\end{align}
である。

まず、$X_n$が1ビットのユニタリー演算と制御Uで作れることを示す。
例として$X_0$は行列表示すると、
\begin{align}
\begin{pmatrix}
e^{i\gamma_0} & 0 & 0 & 0 \\
0 & 1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 1
\end{pmatrix}
\end{align}
である。
これは第1ビットに対するNOT演算と制御Uを用いて作ることができる。
\begin{align}
&NOT+制御U+NOT\notag \\ =
&\begin{pmatrix}
0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 1 \\
1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 1 & 0 & 0
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & u_{11} & u_{12} \\
0 & 0 & u_{21} & u_{22}
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 1 \\
1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 1 & 0 & 0
\end{pmatrix} \\ =
&\begin{pmatrix}
u_{11} & u_{12} & 0 & 0 \\
u_{21} & u_{22} & 0 & 0 \\
0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 1
\end{pmatrix}
\end{align}
ここで、$u_{11}=e^{i\gamma _0},u_{12}=u_{21}=0,u_{22}=1$とすれば、$X_0$となる。
他の$X_n$についても同様である。$X_0$について量子回路を書くと、下のようになる。

次に、(\ref{eq:Unitary2})を証明する。(\ref{eq:Unitary})を書き換えると、
\begin{align}
S|\psi_n \rangle = e^{i\gamma_n} |\psi _n \rangle \qquad (n=0,1,2,3)
\end{align}
となる。よって、(\ref{eq:Unitary2})の代わりに、
\begin{align}
\prod_{i=0}^3 G(\psi_i)^{-1} X_i G(\psi _i) | \psi_n \rangle = e^{i\gamma_n } |\psi _n \rangle
\qquad (n=0,1,2,3) \label{eq:Unitary3}
\end{align}
を示せばよい。

ここで、
\begin{align}
& (n | G(\psi_n) | \psi _m \rangle \\
= & \langle \psi_n | G(\psi_n)^\dagger G(\psi_n) | \psi_m \rangle \\
= & \langle \psi_n | \psi_m \rangle \qquad (n\neq m)
\end{align}
を用いると、$n\neq0$のとき、
\begin{align}
& G(\psi_0)^{-1} X_0 G(\psi _0) | \psi_n \rangle \\
= & G(\psi_0)^{-1} \{ e^{i\gamma_0} |0)(0|+|1)(1|+|2)(2|+|3)(3| \} G(\psi_0)|\psi_n \rangle \\
= & G(\psi_0)^{-1} \{ |0)(0|+|1)(1|+|2)(2|+|3)(3| \} G(\psi_0) |\psi_n \rangle \\
= & G(\psi_0)^{-1} G(\psi_0) | \psi_n \rangle \\
= & |\psi_n \rangle \qquad (n\neq 0 のとき)
\end{align}
よって一般には、$n\neq m$のとき、
\begin{align}
&G(\psi_n)^{-1} X_n G(\psi_n) | \psi \rangle \\
= & |\psi_m \rangle (n\neq m のとき)
\end{align}
となる。$n=m$のときは、
\begin{align}
& G(\psi_n)^{-1} X_n G(\psi_n) |\psi_n \rangle \\
= & G(\psi_n)^{-1} X_n |n) \\
= & G(\psi_n)^{-1} e^{i\gamma _n} |n) \\
= & e^{i\gamma_n} |\psi_n \rangle
\end{align}
以上より、
\begin{align}
\prod_{i=0}^3 G(\psi_i)^{-1} X_i G(\psi _i) | \psi_n \rangle = e^{i\gamma_n } |\psi _n \rangle
\qquad (n=0,1,2,3)
\end{align}
となる。
よって(\ref{eq:Unitary3})が示されたから、(\ref{eq:Unitary2})が示されて、
\begin{align}
S=\prod_{n=0}^3 G(\psi_n)^{-1} X_n G(\psi _n)
\end{align}
となり、任意の2ビットのユニタリー変換$S$が、
$G(\psi_n)$と$X_n$であらわされた。

したがって、任意の2ビットのユニタリー変換が、
1ビットのユニタリー変換と2ビットの制御NOTで作れることが示せた。

以上の議論を応用すれば、任意の$n$ビットのユニタリー変換が、
1ビットの演算と制御NOTのみで構成できることを示すことができる。

制御U演算とは、制御NOTを拡張した演算で、
制御ビットである第1ビットが$|1\rangle$のときのみ、
第2ビットの標的ビットに
\begin{align}
u=\begin{pmatrix} u_{11} & u_{12} \\ u_{21} & u_{22} \end{pmatrix}
\end{align}
のユニタリー演算を与えるもので、(\ref{eq:Base1})の基底をとったときの行列表記では、
\begin{align}
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & u_{11} & u_{12} \\
0 & 0 & u_{21} & u_{22}
\end{pmatrix}
\end{align}
となる。

制御V演算とは、制御U演算の逆で、
第1ビットを標的ビットとし第2ビットを制御ビットとしたものである。

すなわち第2ビットが$|1\rangle$のときのみ第1ビットに$u$の演算が作用する。
上と同じ基底を取れば
\begin{align}
\begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & v_{11} & 0 & v_{12} \\
0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & v_{21} & 0 & v_{22} \\
\end{pmatrix}
\end{align}
と行列表記できる。

clip005.jpg

図1.7:制御U、制御V

この制御U演算と制御V演算が、
1ビットのユニタリー変換と制御NOT演算で構成できることを示す。

例として制御U演算について示す。

前述の(\ref{eq:Phi}),(\ref{eq:Rz1}),(\ref{eq:Ry}),(\ref{eq:Rz2})を用いて、
1ビットのユニタリー変換が、
\begin{align}
\Phi (\delta) R_z(\alpha) R_y(\beta) R_z(\gamma)
\end{align}
とあらわせることを用いる。また、
\begin{align}
& R_y(\beta_1)R_y(\beta_2)=R_y(\beta_1+\beta_2) \\
& R_z(\alpha_1)R_z(\alpha_2)=R_z(\alpha_1+\alpha_2) \\
& \Phi (\delta_1)\Phi(\delta_2)=\Phi(\delta_1+\delta_2) \\
& XX= I (恒等変換) \\
& XR_y(\beta)=R_y(-\beta)X \\
& XR_Z(\alpha)=R_z(-\alpha)X
\end{align}
という関係があることを簡単に計算することができる。
以下でこれらを用いる。

ここで、
\begin{align}
& A=R_z(\frac{\alpha-\gamma}{2}) \\
& B=R_z(-\frac{\alpha+\gamma}{2})R_y(-\frac{\beta}{2}) \\
& C=R_y(\frac{\beta}{2})R_z(\gamma)
\end{align}
と$A,B,C$を定義すれば、その積$ABC$は、(\ref{eq:kei1})〜(\ref{eq:kei6})を用いて、
\begin{align}
& ABC=R_z(\frac{\alpha-\gamma}{2})R_z(-\frac{\alpha+\gamma}{2})R_y(-\frac{\beta}{2}) R_y(\frac{\beta}{2})R_z(\gamma) \\
= & R_z(-\gamma)R_y(0)R_z(\gamma) \\
= & R_z(-\gamma)R_z(\gamma) = I
\end{align}
となる。よって$ABC$は恒等変換となる。

また、$\Phi(\delta)AXBXC$は、

\begin{align}
&\Phi(\delta)AXBXC \\
=& \Phi(\delta) R_z(\frac{\alpha-\gamma}{2})X
R_z(-\frac{\alpha+\gamma}{2})R_y(-\frac{\beta}{2})X
R_y(\frac{\beta}{2})R_z(\gamma) \\
=& \Phi(\delta) R_z(\frac{\alpha-\gamma}{2}) R_z(\frac{\alpha+\gamma}{2}) R_y(\frac{\beta}{2})
XX R_y(\frac{\beta}{2})R_z(\gamma) \\
=& \Phi(\delta) R_z(\alpha) R_y(\beta) R_z(\gamma)
\end{align}

となる。これは任意のユニタリー変換を表している。

従って図1.8のように回路を作れば
2ビットに対する制御U演算が実現できる。

clip006.jpg

図1.8:制御Uの回路図

これは制御ビットが$|0\rangle$の状態
ならば標的ビットに$ABC=I$の恒等変換がかかり、
制御ビットが$|1\rangle$の状態ならば標的ビットに$\Phi(\delta) R_z(\alpha) R_y(\beta) R_z(\gamma)$の
任意のユニタリー変換がかかることを示している。

まったく同様にして、制御ビットと標的ビットを逆にすることによって、
制御V演算も実現できる。


従って、制御U演算と制御V演算が、
1ビットに対する演算と2ビット制御NOTによって実現できることが示された。

制御NOT演算は2ビットの入力に対して行われる操作である。

この制御NOTでは、1番目のビットを制御ビット、
2番目のビットを標的ビットと呼ぶ。

制御ビットは入力されたものがそのまま出力される。
標的ビットは、制御ビットが$|0\rangle$のときは変化せず、
制御ビットが$|1\rangle$のときは反転する。

すなわち、第1ビットの制御ビットが$|1\rangle$のときのみ、第2ビットの標的ビットに、
\begin{align}
X=
\begin{pmatrix}
0 & 1 \\ 1 & 0
\end{pmatrix}
\end{align}

のNOT演算が掛かることを意味する。すなわち、
\begin{align}
|0\rangle |0\rangle \longrightarrow |0\rangle|0\rangle \\
|0\rangle |1\rangle \longrightarrow |0\rangle|1\rangle \\
|1\rangle |0\rangle \longrightarrow |1\rangle|1\rangle \\
|1\rangle |1\rangle \longrightarrow |1\rangle|0\rangle
\end{align}
という演算をする回路が制御NOT演算である。(図1.6)

clip004.jpg

図1.6:制御NOT変換

このような2ビットの演算も行列であらわすことを考える。
1ビットのときと同様にして、
2ビットの状態を縦ベクトルであらわすと、
\begin{align}
|0\rangle |0\rangle =\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix},
|0\rangle |1\rangle =\begin{pmatrix} 0 \\ 1 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix},
|1\rangle |0\rangle =\begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \\ 0 \end{pmatrix},
|1\rangle |1\rangle =\begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix} \label{eq:Base1}
\end{align}
となる。これらを基底とすれば、制御NOTは
\begin{align}
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 1 \\
0 & 0 & 1 & 0
\end{pmatrix}
\end{align}
と表すことができる。

次に1ビットのユニタリー変換と制御NOTの応用である、
制御U、制御Vについて述べる。

1量子ビットの状態は行列を用いると、
\begin{align}
|0\rangle = \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix} \\
|1\rangle = \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix}
\end{align}
と表すことができる。

また、古典的なビットと違うところは
\begin{align}
|\psi \rangle = \alpha |0\rangle +\beta |1\rangle = \begin{pmatrix} \alpha \\ \beta \end{pmatrix}
\end{align}
という重ね合わせの状態も可能な点である。

そして、前に述べたように、この状態ベクトルの時間変化が演算であるので、
演算はユニタリー変換となる。

ユニタリー変換を1ビットの状態を基底として行列で表せば、1ビットの場合
\begin{align}
U=\begin{pmatrix} \langle 0|U|0 \rangle & \langle 0|U|1 \rangle \\
\langle 1|U|0 \rangle & \langle 1|U|1 \rangle
\end{pmatrix}
\end{align}
と書ける。

このように状態と演算を行列で表せば、状態がユニタリー変換によってどう変わるか、
すなわち、量子ビットがどのように演算されるかが、以下のように書くことができる。
\begin{align}
& U×入力側の状態ベクトル=出力側の状態ベクトル \notag \\
% & U(\alpha |0\rangle + \beta |1\rangle)=\alpha U|0\rangle +\beta U|1\rangle \\
& \begin{pmatrix} \langle 0|U|0 \rangle & \langle 0|U|1 \rangle \\
\langle 1|U|0 \rangle & \langle 1|U|1 \rangle
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix} \alpha \\ \beta \end{pmatrix}
= \begin{pmatrix} \langle 0|U|0 \rangle \alpha + \langle 0|U|1 \rangle \beta \\
\langle 1|U|0 \rangle \alpha + \langle 1|U|1 \rangle \beta
\end{pmatrix}
\end{align}
次に、いくつかの1ビットの変換を見ていく。


・NOTゲート

$|0\rangle$と$|1\rangle$を入れ替える演算である。行列では
\begin{align}
X=
\begin{pmatrix}
0 & 1 \\ 1 & 0
\end{pmatrix}
\end{align}
と表すことができる。

実際に計算すれば、初期状態を$|0\rangle$として、
\begin{align}
\begin{pmatrix}
0 & 1 \\ 1 & 0
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
1 \\ 0
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
0 \\ 1
\end{pmatrix}
\end{align}
と出力が$|1\rangle$となり、反転されていることがわかる。(図1.3)


clip007.jpg

図1.3:NOTゲート

・アダマール変換

$|0\rangle$と$|1\rangle$の重ね合わせ状態を実現するゲートである。
行列では
\begin{align}
H=\frac{1}{\sqrt{2}}
\begin{pmatrix}
1 & 1 \\ 1 & -1
\end{pmatrix}
\end{align}
とあらわされる。

例えば入力が$|0\rangle$であるとすると、
\begin{align}
\frac{1}{\sqrt{2}}
\begin{pmatrix}
1 & 1 \\ 1 & -1
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
1 \\ 0
\end{pmatrix}
=\frac{1}{\sqrt{2}}
\begin{pmatrix}
1 \\ 1
\end{pmatrix}
\end{align}
と重ねあわせの状態$\frac{1}{\sqrt{2}}(|0\rangle+|1\rangle)$が出力される。


clip008.jpg

図1.4:アダマール変換


・1ビットの任意のユニタリー変換

1ビットの任意のユニタリー変換は、
1ビットの任意の変換がユニタリーである条件$U^{\dagger}U=1$より、
以下のように表すことができる。(付録A)
\begin{align}
\begin{pmatrix}
ae^{i(b-c+d)} & -(1-a^2)^{\frac{1}{2}}e^{ib} \\
(1-a^2)^{\frac{1}{2}}e^{id} & ae^{ic}
\end{pmatrix}
\end{align}
ここで、$a,b,c,d$は任意の実数である。

また変数を変換すれば、任意のユニタリー変換は
\begin{align}
&\begin{pmatrix}
\cos \frac{\beta}{2} e^{-i(\frac{\alpha}{2}+\frac{\gamma}{2}+\delta)}
& -\sin \frac{\beta}{2} e^{-i(\frac{\alpha}{2}-\frac{\gamma}{2}+\delta)} \\
\sin \frac{\beta}{2} e^{i(\frac{\alpha}{2}-\frac{\gamma}{2}+\delta)}
& \cos \frac{\beta}{2} e^{i(\frac{\alpha}{2}+\frac{\gamma}{2}+\delta)}
\end{pmatrix} \\
=& \begin{pmatrix} e^{i\delta} & 0 \\ 0 & e^{i\delta} \end{pmatrix}
\begin{pmatrix} e^{-i\frac{\alpha}{2}} & 0 \\ 0 & e^{i\frac{\alpha}{2}} \end{pmatrix}
\begin{pmatrix} \cos \frac{\beta}{2} & -\sin \frac{\beta}{2} \\
\sin \frac{\beta}{2} & \cos \frac{\beta}{2} \end{pmatrix}
\begin{pmatrix} e^{-i\frac{\gamma}{2}} & 0 \\ 0 & e^{i\frac{\gamma}{2}} \end{pmatrix} \\
=& \Phi (\delta) R_z (\alpha) R_y(\beta) R_z(\gamma)
\end{align}
とも表すことができる。

ここで$\alpha,\gamma,\beta,\delta$は任意の実数であり、
\begin{align}
&\Phi(\delta)=\begin{pmatrix} e^{i\delta} & 0 \\ 0 & e^{i\delta} \end{pmatrix} \\
&R_z(\alpha)=\begin{pmatrix} e^{-i\frac{\alpha}{2}} & 0 \\ 0 & e^{i\frac{\alpha}{2}} \end{pmatrix} \\
&R_y(\beta)=\begin{pmatrix} \cos \frac{\beta}{2} & -\sin \frac{\beta}{2} \\
\sin \frac{\beta}{2} & \cos \frac{\beta}{2} \end{pmatrix} \\
&R_z(\gamma)=\begin{pmatrix} e^{-i\frac{\gamma}{2}} & 0 \\ 0 & e^{i\frac{\gamma}{2}} \end{pmatrix}
\end{align}
である。


clip003.jpg

図1.5:任意のユニタリ-変換

任意のユニタリー変換には、
上で示したNOTゲートなどのユニタリー変換が含まれている。

この1ビットの任意のユニタリー変換の、物理的な実現方法は、
量子計算機の設計の章で述べる。

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